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宮本倫和 和みの極み

宮本倫和 和みの極み > りんの連続小説 第二話
2010年6月16日(水)

りんの連続小説 第二話

男はずっと待っている。

死神である男の姿を見る事が出来るのは死に行く者のみ。繰り返し繰り返し男は死者の魂を旅立たせる。どれだけの時間が流れても男は手を差し伸べ続ける。流れる時間の中、否、男にとっては止まっていると感じているかもしれない時の中、ただ表情を変えず。気が遠くなるような時間の中、男はずっと何かを待っている。男が人間から死神になった時、一つの選択をしていた。

死神には素質がいる。

死者の誰もが死神になれるというわけではない。魂の素質が必要なのである。
男にはその素質があった。人間として一生を突然の事故で終えたとき、男のそばにも年老いた死神が立っていた。手を差し伸べることなくその死神は男に微笑みかけた。その瞬間、男の脳裏に様々な光景が広がった。死神が死者の魂を旅立たせる光景である。その光景が全てを物語っていた。死神の素質がある者は選択できる。死神になるか、死者として旅立つか。男は朦朧とする意識の中で死者として旅立つ事を決めた。

死神になる事は選択できる。

男が死者として旅立つ事を決めたとき、はっきりと恋人の声を聞いた。
事故で横たわる車の中から確かに恋人の自分を呼ぶ声が聞こえたのである。
「そうだ!車にはあいつが…」
霞掛かっていた意識が突如はっきりした。男の魂は車に駆け寄り彼女を見つけた。その横に意識の無い自分がいることも目に入らず。その瞬間後続から別の車が猛スピードで追突してきた。

気がつくと男は病院の一室に立っていた。ICUである。ベットに横たわる彼女には意識が無いが一命は取り留めていた。呆然と立ち尽くす男に年老いた死神が話しかけた。
「助かる事は無い。ただまだ死ぬ事も無い。」
男は死神を睨みつけた。
「お前に何がわかる!」
男の魂は死神の胸ぐらを掴んだ。
「わかるんだよ。彼女にはまだ死神が来ていない。まだ死ぬ事は無いが助かる事も無い。」
死神は男の眼を見つめこう続けた。
「これから数ヶ月彼女の意識が戻る事は無い。何度も死にかけるがまだ死ぬ事は出来ない。数ヶ月間苦しむ事になる。」
男は死神の眼を見つめ、それが真実であることを悟った。
「ただ一つ方法がある。」
立ち尽くす男に死神は言った。
「彼女の死神はまだ来ない。その間死ぬ事は出来ないが助かる事も無い。特別な死神がくれば彼女は苦しまずに旅立てる。ただまだ寿命があるものを旅立たせるには特殊な素質が必要だ。俺には出来ないがお前なら出来る。」
「死神になれば死者として旅立てはしない。この世に残り死神として気が遠くなるような時間働かなければならない。それでも構わないなら…」

男は何も言わず頷いた。

自分が死神になることで苦しまずに旅立てるなら…。一緒にあの世へ行く事は出来ないとしてもそう選択するしか出来なかった。男はベットに横たわる恋人へ優しく手を差し伸べ、笑顔で言った。
「ありがとう」

~第三話へ続く~